月が綺麗ですね
エレベーターを降り徹さんと一緒に副社長室に入ると、

「どうして専務にあんなこと言ったんですかっ?」

動揺を隠せず私は彼に問いただす。


「本当のことを言ったまでだ。何が悪い?」

逆に聞き返されてしまう。


いやいや本当も何もないんですが。


「だって、私たち恋人同士になったばかりだし、結婚とかまだ決めてないじゃないですか。それに専務から他の人にこの話が伝わったら...」

「恋人同士だが結婚相手でもある。それに叔父は俺が正式発表をするまで絶対に喋らない。彼はそんな人だから俺も喋ったのさ。口が裂けても会長にはまだ言えないがな」


鞄から書類を出すと徹さんは涼しげな顔でパソコンを立ち上げる。


「あっ、まだ机を拭いていません。今すぐに拭きます」


私はクルリと徹さんに背を向けて、歩き出そうとする。


ん!?

動けない。


「お前は俺との結婚が嫌なのか?」


しっかりと腕を捕まれていた。
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