月が綺麗ですね
「そろそろ帰らないと都内に着くのが遅くなっちゃいますね」

「まだ行きたいところがあるんだが」


彼が腕時計に視線を落とす。どうやら時計の針は17時を回っていた。
西の空を見上げると昼と夜が入れ替わるところだった。

眩しくオレンジの光を放っていた太陽が山影にその姿を落とそうとしていた。

あっという間に夜の闇へと包まれる。


「せっかく遠出してきたんですから行きましょうか」


私は徹さんの腕に自分の腕を絡めた。


「どこに行きたいんですか?」

「...行けば分かる」


徹さんはとっても優しいのに時々意地悪になる。

でもそんな時はサプライズがある時だ。

私は胸を弾ませて車に乗ったのだった。
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