月が綺麗ですね
そこは石造りの教会だった。

観光地の夜は早いせいか訪れる人はなく、私たち二人きりだ。

正面の祭壇には小ぶりなロウソクがたくさん飾られていて、ユラユラと影を作っている。

近寄って壁を見ればツル性の観葉植物?が教会の壁を一周するように覆われていて、さらに壁を伝って流れている水は清らかな音を響かせている。


「建物の中に植物と水があるなんて、不思議だしロマンチックですね」

私は瞳を輝かせながらあちこちに視線を走らせる。


「写真では何度か見ていたがこれほどまでとは思わなかった。入口からはダンジョンを思わせるワクワク感があって、視界が開けるとまるで洞窟の中につくられた教会だ」

徹さんも感嘆のため息を洩らしている。


「徹さん、ここ知ってたんですか?」

「わりと有名だったし、事前に下調べした時に風花と来たいと思っていた」

「ありがとうございます。こんな素敵な所に連れて来てくれて」

「ああ」

少し照れたように彼は眼鏡のフレームを直す。


私は両手を胸の前に組み、ワクワクする気持ちを隠しきれずに口元をほころばせたままだ。
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