月が綺麗ですね
そしてゆっくりと唇が離れる。


「もうこれで風花は俺のものだ。一生俺から離れられない」

「...は...い」


涙声で私は頷いた。


すると、「ゴーン、ゴーン」と教会の鐘が鳴った。

それは閉館の18時を知らせる鐘の音だったが、私たちには祝福の鐘に聞こえた。



彼はもう一度私のおでこに口づけを落とすと笑顔をつくる。


「さあ、帰ろう」そう言って私の手を取る。

「はい」


手をつないで出口へと向かうとそこには初老の男性が立っていた。手には鍵束が握られている。

どうやら教会の戸締りに来たらしい。


私たちが会釈をすると、

「お幸せに」

笑顔で祝福の声をかけられたのだった。


見られていたの?


ちょっぴり恥ずかしかったけれど、全身を幸せで包まれているような感覚をいつまでも私は抱きしめていたのだった。

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