月が綺麗ですね
視線を動かすと、人事の弘くんが緊張気味に座っているのが見える。

新入社員研修の責任者を仰せつかったと、同期の飲み会で興奮気味に話していたっけ。

頑張れ弘くんっ!

私は心の中で彼にエールを送った。


式は滞りなく進み役員の紹介へと移っていた。


時間を確認すると私は立ち上がり、目立たないように腰をかがめながら徹さんの座る席まで移動する。


「副社長、そろそろお時間です」

「分かった」


小声で会話を交わし、一番近い出口から私たちは会場の外へと出た。


「飯塚さんは既に車で待機しています」


徹さんはこれから新規の仕事で会食が控えていた。
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