月が綺麗ですね
「あの、いがちゃん。もう副社長の出社時間だからそろそろ...」

「あら、知らないの?」


彼女は椅子を揺らしながら、得意気な顔をして私のほうに視線を向けてくるから、こっちも『な、何よ』と身構えてしまう。


「知らないって、何が?」

「今日、彼お休みよ」


えっ...お休み?


「連絡来てないの?」

「...う...ん」


さっき社内用携帯を確認したけれど、そんな連絡は入っていなかった。私はもう一度確認するために、ポケットから携帯を取り出す。やっぱり連絡は入っていなかった。


連絡が来ないのは、土曜日のことが原因なんだろう。

それは仕方ないけれど。でも、でも。


秘書の私に連絡が無くて、どうしていがちゃんは徹さんが休むこと知っているの?

恋人としてではなく、秘書としての疑問が浮かぶ。


「何でも、土曜日に雨のなか長時間立ってて風邪ひいたらしいわよ」


えっ!!!?


待って...どう言うこと!?
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