月が綺麗ですね
秘書は副社長の仕事のすべてを把握していなければならない。なのに、新ブランドのこと聞いてない。

極秘だから販売と話を進めていたにしても、一言あって然るべきなのに。

さっきから、カヤの外感が半端ない。休みのこと、プロジェクトのこと。

いがちゃんと徹さんって...ふつふつとある疑念が湧いてくる。



「ねぇ、風花。プロジェクトのことくれぐれも誰にも話さないでよね。先輩秘書さんにも」

「へっ!?じゃあ飯塚さんも知らないってこと?」

「そっ。これは私と副社長しか知らないわ。彼は私だけに教えてくれたのよ。お酒を飲みながら。うふふ、ベッドの上で」


ベッドの上で!?


まるで雷に撃たれたような痛みと痺れが私の全身に走った。

...信じられない...。


いがちゃんの言葉を聞いて、『へー、二人は随分仲のいい友達なんだね』なんて思う女性は十中八九いないだろう。

男女の関係があるって思うに決まってる。


だとしたら、やっぱり...二人は...。


喉にあった塊は胸へと降りてくる。

立っているのが辛かった。

私は完全にうろたえてしまっていた。
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