月が綺麗ですね
エントランスの自動ドアが開いた時、丁度黒塗りの高級車が門をくぐって入って来るところだった。


乱れる息を無理矢理抑え込むように、私は口を閉じて飯塚さんの隣に駆け寄る。


「...間に合って良かったわね」

「はい...」


笑顔を作るものの、突然酷使された心臓は爆発寸前。


車はゆっくりと車止めの下で停まる。


運転手の山下さんが後部座席を開けると同時に飯塚さんが頭を下げる。



「お帰りなさいませ」


「お、お帰りなさいませ」


一拍遅れて飯塚さんを真似るように頭を下げた。
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