月が綺麗ですね
こんな遅い時間まで誰か残っているの?


私は”open”を押した。

15階の明かりも完全に落とされている。非常灯が寂しく足元を照らしているだけ。
視界には暗闇が広がっていて、空恐ろしささえ感じてしまう。


「誰もいないじゃない」


私が”close”を押そうとした瞬間。

暗いエレベーターホールから腕が伸びてきたと思ったら、私はその得体の知れない大きな手につかまれ、強引にエレベーターの外に引きづり降ろされていた。


えっ!?


だ、誰っ!?


変質者っ!?


暗くて相手が良く見えない。


この時間、この暗闇。ただでさえビクビクしていたところに、こんな災難が訪れるなんてっ。

肩から鞄がバサリと音をさせて落ち、恐怖で声が出せないでいると、得体の知れない黒い影は私を強引に壁に押し付け、


...唇を奪った。
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