月が綺麗ですね
良かった変質者じゃなくて。
徹さんだと分かり体から力が抜けていく。

私のそんな行動を確認すると、唇が離れた。


「どうして俺を避けている?」


その声は問いかけと言うよりは尋問に近かった。


「...避けてなんかいません」


「避けているだろう。あの日以来お前の様子は明らかにおかしい。風花を無理に抱こうとしたからか?...お前に無視されるのが辛いんだ。一緒に仕事をするのを嫌がっているようだし、どうしてスマホに連絡しても出ない?」


捕まれた手首に力がこもる。


「何故そんなこと言うんですか。どれだけ私を翻弄すれば気が済むんですか?」

「翻弄だって?」

「私...徹さんと別れようって思いました」

「別れるっ!?一体何故だっ!?」


ジリジリと絞めつけられる手首は感覚を失いそうだ。


「理由を言え、風花っ!」


「...こんなことしてたら、いがちゃんに怒られますよ」


一瞬彼の動きが止まった。



「俺と香奈子のことを知っていたのか?...ああ、少し前に俺の妹だと話したな。だがどうしてあいつが関係あるんだ?」


また、嘘をついた...。
妹じゃなくて、今カノでしょ。


「だって徹さんにとって大切な人ですよね?」

「それは...そうだが。でも...俺にとっては風花のほうが大切だ」


...それは本心かな?
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