月が綺麗ですね
こんな私はみじめ過ぎる。だから、いがちゃんに泣き顔を見られたくなかった。


「もういいよ、行こう弘くん」

「五十嵐と腕組んで仲良くお買い物かよっ!!どの面下げてそんなことできるんだよっ!!」

「君にとやかく言われる筋合いはない。それに俺は風花と話がしたい。菱倉、邪魔をするなっ。風花、俺の話を聞け」

「最低だなっ!!俺はあんたをそれなりに尊敬してたんだ。仕事も出来るし、ウチの会社を業界1位にも押し上げた。秘書室を改革しようともしてた。だが、見損なったよっ!!」

「弘くんやめてっ!!」


泣きながら叫んでいた。

もう、何が何だか分からない。とにかくこの場を離れたかった。


「あんたは風花を愛する資格なんてないっ!!風花は俺が幸せにするっ!!」

「何だとっ!?」


徹さんのドスの効いた低い声が、私の耳にはっきりと聞こえた。


「もし君が風花を幸せに出来るとしても、肝心な風花が君を好きではあるまい」

「ぐっ...」


「行こうよ、弘くん」

「待て風花っ!離せっ香奈子っ!!」


徹さんの声が背中から聞こえたけれど、私は弘くんの腕を無理矢理引っ張ってその場を離れたのだった。
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