月が綺麗ですね
「ふうちゃんっ!?」


えっ!?


キョロキョロしながら闇に視線を走らせると、「こっちこっち」視線の先には隣の家のおばさんが手を振っていた。

私は窓の手すりから下を覗き込むように身を乗り出す。


「おばさん、こんばんは」

「帰って来てたのね」

「はい。今降りますね」

「いいわよ来なくて。いやね、お父さんとお母さんとふうちゃんはゴールデンウィークは帰って来ないって聞いてたし、浩史くんはサークルの合宿でいないって言ってたのに、ガタガタ音がするでしょ。泥棒かと思って心配で見に来たのよ」

「すみません、お騒がせしちゃって」

「でも泥棒じゃなくてホッとしたわ。ふうちゃんなら良かった。東京での仕事はどう?」

「はい、お陰様で何とかやってます」

「いずれこっちには帰って来るんでしょ?」

「多分...」

ズキンと心が痛んだ。


「そうそう浩史くん、時々女の子連れて来てるわよ」

「えっ!?知りませんでした」

「あんな小さかったのに、もうそんな年頃なのねぇ。私もシワが増えるわ」

「はは...」
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