月が綺麗ですね
「何だかふうちゃんも綺麗になったわよ。東京で彼氏でも出来たのかしら?」


きっとおばさんは社交辞令で言ってるんだろう。


「まさか。いい人いたら紹介してください」

「モテるくせに何言ってるのよっ。とにかくふうちゃんで良かったわ。じゃ、おばさん帰るわね」

「はい、ありがとうございました」


隣のおばさんは手を振って帰って行った。


「ふぅ」


小さくため息をついて、私は再び窓辺に座る。


昔は人情って言われる一連の好意が嫌いだった。うっとおしいと思った。隣のおばさんだってお節介な人って思ってた。

だけど、この街にはまだそれが残ってるから、きっと暖かいんだね。


私は夜空に浮かぶ月を見上げた。


「明日は満月かな?」
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