月が綺麗ですね
──鐘の音と共に式が始まった。

讃美歌の響く教会の中央へと私たちはゆっくりと進む。


席を見れば、いがちゃんと弘くんが並んで座っている。


神父様が聖書を朗読し、誓いの言葉へと進む。

清らかな水の音が神父様の声と重なり、二人で教会に来た時より更に厳かで神聖さを増しているように感じる。



「指輪の交換を」


それは銀座のショップの物だった。徹さんといがちゃんがこっそり用意してくれたもの。この指輪は徹さんが選んでくれた。「俺のセンスを信用しろ」って言われた。

もちろん信じてます。だって徹さんは服も車も、デートプランや連れて行ってくれるお店も、それから本や音楽の趣味だって何をとっても素敵なんだから。

今日のドレスだって洗練されていてとても素敵。文句のつけようがない。


徹さんを見つめると、彼は頷く。

温かい手が私の手に重なり、ゆっくりと指輪が左手の薬指にはめられた。


これで私...彼の妻になったんだ。讃美歌を聞きながらじんわりと胸が熱くなってくる。



そしてベールアップに続いて、いよいよ...。


「誓いの口づけを」


神父様の声が教会内に響き渡る。


その言葉でギクリと心臓が跳ねる。


いがちゃんと弘くんの前で...恥ずかしい。


けれど、徹さんはなんの躊躇もなく私の肩に手を置き、そのまま顔を近づけてきた。

と、徹さんっ!!

目で訴えたものの、見事にスルーされてしまい...。



それは自分でも不思議だった。瞳を閉じて唇が重なった瞬間、涙が流れた。

そして、二人で過ごした日々が鮮やかによみがえる。
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