月が綺麗ですね
だけどそこまでしてくれていたんて。驚きを通り越して感心するしかない。ううん、感心どころか嬉しくて泣きそう。

あなたの愛を思い知りました。


「...風花。順序が逆になってしまったが、婚約指輪はどんなものが欲しい?」


私は窓から外を見た。都会とは比べものにならないくらいに満天の星が空に輝いている。そのひとつひとつが美しさを主張するかのように。


「あの、ちいさな星々を集めて指輪にして下さい」

それに対して彼は慌てる様子も、飽きれる風でもない。


「まるでおとぎ話のようだな。求婚者に無理難題を言ってそれを叶えた者が姫と結婚できる...」

「徹さんに、出来ますか?」

「お前のためなら出来ないことなどないさ。必ずお前の望みを叶えてやる」

「どうやって?」

「おとぎ話の若者のように、お前のために命を投げうつ覚悟はある」

そう言って唇を重ねた。



窓の外には以前軽井沢に来た時のような雪はもう無かった。

そこには新しい季節を知らせる黄色の花がひっそりと咲いていた。

まるで私たちの門出を祝福するかのように。
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