月が綺麗ですね
そう、夢は現実を引き寄せる。

ふと徹さんは私を抱き上げようとする。


「徹さん...?」

「さあ、そろそろ愛し合おうか?」


揺れる彼の瞳の奥には熱情をたたえているようで...。


「ちょ、ちょっと待って下さい。私まだ心の...」


彼が言葉を遮った。


「今更何を言ってるんだ?もうお前は俺の妻なのだから、俺のすべてを受け入れろ」

「すべてって...やっぱりまだ無理です。だってほら、心臓がこんなにドキドキして壊れちゃいそうです」


胸に手をあてて、私は徹さんを見つめた。


「冗談じゃない。俺がどれだけこの瞬間を待ちわびたと思っているんだっ。それにそんな目をするな。完全に俺は止まれなくなった。お前の責任だからな。いまからその責任を取ってもらう」

「まっ、待って徹さん」


私は彼の腕をすり抜けると、広い室内を逃げ回る。


「ひ、秘書室のお姉さま達のことはどうするんですか?」

「俺が守ってやるから心配はないっ!そもそも、もう俺の妻なのだから連中がとやかく言う筋合いのことでもあるまい」

「で、ですが...」


「俺の想いがどれだけのものか、一晩かけてベッドの上で教えてやるから覚悟しろっ」

「お願い、もう少し会話を楽しみましょうよ。せっかくの軽井沢だし、ロマンチックな夜を...」

「うるさいっ!!愛の言葉なんてお前を抱きながら、いくらでもささやいてやる」



私たちの夜は...。


「い、いやぁーーー!!」


絶叫が熱い吐息に変わるのは時間の問題。



二人で朝を迎える幸せを、思い描きながら。



...まだ終わらない。





∴‥∵~FIN~∴‥∵






< 315 / 316 >

この作品をシェア

pagetop