月が綺麗ですね
「俺はお前を歓迎するがな」


「えっ?」


思いもよらなかった。副社長の態度からして、絶対歓迎されていないと思っていたから。



「飯塚に不満があるわけじゃない。彼女の仕事ぶりは評価している」


その口ぶりからすると、私を秘書室に呼んだのは目の前にいる人ってことになるけれど?


どうして?なんで?

聞きたいけれど、やっぱり聞けない。


彼はグラスをテーブルに置くと、少しだけ意地悪な顔を私に向けて来た。



「お前もやはり、俺の嫁候補に選ばれたと思っているのか?」


えっ?いきなりそこ聞いてくる?

私は細く息を吐き出すと口を開いた。


「三浦さんからは『花嫁候補に選ばれた』と言われましたが、いきなりそんなこと言われても私は実感がないし、それにあまりにも一方的で納得がいきません」


「ほう?」とどこか楽し気な表情に変わる。
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