月が綺麗ですね
「風花はさ、六ツ島さんのことどう思ってるんだよ?」


急にそんなことを振られて、私は少し考える。

六ツ島さん...外見は確かに素敵だと思う。性格は俺様だし、少し冷たい感じもするけど、時々ふっと見せる優しさがクセモノなんだよね。

好きなのか、そうでないのか自分でも良く分からない。



「どうって...別にまだ何とも。だって私あの人のことまだよく知らないし」

「でも向こうはお前を気に入ってるんだろ?」

「さ...さぁ」


もしかしたら気に入られてるかも知れない。でもそれは飯塚さんだって同じだろうし。飯塚さんを秘書室に呼んだ理由を聞いたわけではないけれど。それに『たぶん好かれてると思う』なんて自分の口から言えるわけない。


「私を秘書室に呼んだ理由を聞いても教えてくれないから、どうだろうね?」


私はあえて笑って誤魔化した。


「呼ぶってことは、まぁ、好きなんだろうな」

「.....」


副社長から『俺の女になれ』と言われたこと、弘くんに言いたくなかった。そんな話をしたところで、面白くもなんともないだろう。これが同期の女子だったら、ワーキャー盛り上がるだろうけれど。

それに副社長からの一方的な想いで、その一言で私の気持ちが副社長に動いたわけじゃない。
恋愛にしろ結婚にしろ、お互いの気持ちを大事にしたい。万が一つき合うようなことがあれば、弘くんには話してもいいかな。とは思うけれどまだその段階ではなかった。
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