シンさんは愛妻家
序章。
3年ぶりに気のおけない友人達に会うことになった。

そのクリスマスパーティーは友人の自宅、
タワーマンションの最上階のペントハウスのパーティールームで毎年開かれていて、
毎年招かれてはいたが、なかなか時間が取れなくて、
やっと3年ぶりに参加できたのだ。

「久しぶり、常盤先生。
少し雰囲気がかわったかな?
奥様のおかげ?」

と長いまっすぐな黒髪を揺らし、
背中が大きく開いたグリーンのドレスで微笑むのはこのパーティーの主催者。
東野 桜子。
内科医で同い年の45歳。
東野記念病院の院長の娘。
ズケズケモノを言う性格だけれど、サッパリしたオンナだ。
2歳年下の夫と6歳を頭に3人の子どもがいる。
(とてもそんな風には見えない。モデルのような体型の美しいオンナだ。)

「まあね」

と少し笑うと

「転勤して、すぐに結婚するなんて思ってなかったわ」

と言ったので、

僕も思ってもいなかった。

と心の中で言っておく。

「まあ、ゆっくりしてて。また、あとで詳しく聞くから」

と微笑んで、通り過ぎて行く。

僕はバーカウンターに向かい、バーテンダーにマティーニを頼んで、ゆっくり口を付ける。

こんな風にゆっくり飲むのは久しぶりだ。

僕は3年前の事をのんびり思い出していた。


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