シンさんは愛妻家
狭いワンルーム。

飾り気のない部屋。

ベッドに上には猫のぬいぐるみが2つ置いてある。

布団をめくってとりあえず彼女を横にすると、ネコがベッドに飛び上がって足元で
にゃあにゃあとまた鳴いている。


「タビィ、お腹が空いているんです。」

と彼女が起き上がろうとするので、彼女を止めて、
猫の餌のありかを聞き出し、猫のお皿にジャラジャラと入れると、

「えっと、猫用のミルクも入れてあげてください。」

と冷蔵庫を指差すので、小さな冷蔵庫を開けると、
猫用のミルクと調味料しか入っていない。

やれやれ。

ミルクを注ぐと、待っていたようにネコが顔を突っ込んで勢いよく食べ始めた。

「もう、帰ろうって思ったんだけどさ、
冷蔵庫に何にも入ってない。
買い物してくるから、家の鍵を貸して。」

「え?そんな事までしてもらったら…」

「乗りかかった船だよ。
このまま帰ったら、君が何を食べただろうって気になって眠れない。
いつも食べるものも買えないほどお金がないの?」

「そんなことありません。
あ、あの猫の治療費と、薬代が…」

「そういう事か…ちょっと安心した…」
と僕は少し安心して鍵を持つと、

ピンポン

と風邪をひいたような濁ったチャイムが鳴る。
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