シンさんは愛妻家
「はい」と出ると、

50代くらいの、女性が目の前に立っている。

「あなた誰?
有沢さんは?」と強い口調だ。

「私はえっと…有沢の上司です。
体調が悪くなって連れて帰って来たんです」

と、とっさに嘘をつく。
だれって言われても困る。

ああそうと僕をジロジロ見た後、

「あなた、ネコを見なかった?ここじゃ、ペットは禁止なのよ。」

へ?

にゃあーとネコがベッドの横で鳴く。

…!

「やっぱりねえ。猫の声がするって言われてたのよ。」

とズカズカと部屋の中に入ってベッドにいる彼女とネコをを見下ろし、

「入居した時に話したわよね。ペットは禁止だって…」

「す、すみません。ネコが捨てられていて…病気みたいで…
放っておけなくて…」

「…いい?ネコはどこかにやってね。
できるだけ早く。
涼子先生に頼まれたから、保証人がいなくても置いてあげてるのよ。
それはわかってるわよね。
…それに今月の部屋代も滞ってるんじゃない?
ちゃんと働いてるの?」

「は、働いています。猫の病院代でお金がかかって…
い、今はインフルエンザで熱がありますけど…」

「インフルエンザ!?早く言いなさいよ。
うつったら、困るでしょう!
ネコは捨てて、部屋代を払うのよ
わかったわね。」

と大家さんと思われる女性はプリプリして急ぎ足で部屋を出ようとする。

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