シンさんは愛妻家
藤原動物病院の藤原院長は
前に勤めていた病院の知り合いのナースの夫が経営している。
東野桜子が主催するクリスマスのパーティーで何度か顔を合わせていて
僕よりいくつか年下だけど、気の良い奴だ。

時間外にもかかわらず、チャイムを鳴らすと彼は白衣のままでやって来て笑顔を見せた。

「猫を拾ったの?」と砕けた口調だ。

「まあね。今日子ちゃんにはまだ、言わないでおいてくれる?」

「ふうん。拾ったのは猫だけじゃないみたいだね。」

と車の中から一生懸命猫を見ている彼女に気づいたみたいだ。

「タビィっていうみたいだ。」

「彼女?」

「いや、ネコ」と僕がくすんと笑うと、

藤原もくっと笑い

「どっちも子どもみたいだな。
心配そうにこっちを見てる。
シンさんってさあ…こう…健気な感じに弱いよねえ。」

「…言うなよ。自分でもそう思ってるんだから…
別に…惚れてるわけじゃないよ。子どもだし
放っておけないだけなんだ。」

おまけに彼女の心は女じゃないんだよねえ…
と思う。

「まあ、わかったよ。綺麗にしておく。」

とキャリーケースを持って病院に戻って行く。

僕も手を振り車に戻った。

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