シンさんは愛妻家
「…美味しい」
猫舌なのかふうふうと息を吹きかけ冷ましながら
昆布ダシのタマゴ粥を食べて呟く彼女に
たくさん食べてと食事をさせ、

食後にほうじ茶を出しながら

「君は…タビィを飼えない環境にあると思うんだけど。
どうするつもりだったの?」

「誰かにもらって欲しいって思ったんですけど…
世話をしてたら…懐いて…可愛くて…
でも…ダメですよね。
…もらってくれる人を探します。コンビニに張り紙を出して…」

と言っている間に涙が溢れ落ちる。

おいおい。

「…この1ヶ月ずっと考えていたんですけど…
でも…決心がつかなくて…
初めての…家族だったから…」

ああ、もう…

僕は深いため息が出る。

「…君には家族はいないって言ってたけど?」

「僕、じゃなくて、私は…施設に捨てられていたんです。
『伊吹』って…書いてある紙が入っていたみたいです。
苗字なのか名前なのかわからなかったけど…
施設長が名前をつけてくれました。
高校までそこにいて…施設を出て仕事をはじめたんです。」


『私』って言い直さなくていいんだけど…
まあ、そのうち君がオトコだと気付いてると言ってあげよう。

「…今のコンビニ?」

「最初は普通の小さな運送会社の事務だったんですけど…
施設育ちだって周りに知られると…いじわるされたり…して…
何度か仕事を代わって今はコンビニに落ち着きました。
アルバイトだから、お給料は安いけど…、一緒に働く人たちが親切で…
…2年続いています。」

とポツポツ話す。


あの、子猫が初めての『家族』か…

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