シンさんは愛妻家
「…いや、…ずっとって訳じゃない。
君が飼えるようになったら…
君に返す。
僕は動物好きって訳じゃないから…
君が飼えるようになるまであずかっておく。」

と苦しい返事をしてしまう。

…いつまでも彼女がここに来るとは限らないよな。
彼女が来なくなったら猫も僕も途端に困ってしまいそうだし…

「…いつまでたっても…飼えるようにならないかも…」

と彼女がガッカリと肩を落とす。

目に見えて落ち込む表情が、素直でわかりやすい。


…どうにかしてやりたいって思わせるヤツだな…とつい、顔がほころんでしまう。

僕も君がタビィを飼えるようにならないと困る…


「…うーん。どうしたら、君がタビィと一緒に暮らせるようになるか、僕も考えるよ。
…だから、今はインフルエンザを治す事を考えて。
とりあえず、もう一度寝なさい。
先に洗面所で身体を濡れたタオルで拭くといいよ。
タオルは棚にある物を好きに使って。
服や歯ブラシは君の部屋から持ってきたから…
ああ、それと、解熱剤が切れる夜中に『巡回』にいくから、驚かないでね。
もう、一度くらい飲まないと、下がらないと思うから…」

と言っておくと、素直にコクリと頷く。



まあ、ちっとも警戒されてはいないみたいで、複雑な気もするけど…

…23歳なら…娘のようなものだしな…
中身は男の子みたいだから…息子?
にはとうてい思えないけど…

冷めたカップのほうじ茶を美味しそうにゴクゴクと飲んでいる彼女を眺めた。




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