シンさんは愛妻家
仕事を早めに終え病院を出る。

昼休みと病院を出る前に彼女にメッセージを送ると、
すぐに返信があって解熱剤を午前中に一度使った後は熱も上がらなかった様子で落ち着いていたようだったので、
そのまま買い物を終えたら、猫を迎えにくことにした。

猫のエサにミルク。トイレに爪とぎにオモチャに猫タワーまで買い込んでしまう。

もしかして、僕はワクワクしているのだろうか?


診療時間が終わった動物病院に着いて、チャイムを鳴らすと、

藤原がガチャリとドアを開けて、僕を招き入れる。

僕が薄い水色の壁紙の貼られた待合室のブルーのソファーに座って待つと、

タビィがキャリーに入れられ、にゃあにゃあと泣きながらやって来た。


「問題はなさそうだよ。一応検査したけど。」

「ありがとう」

「本当に猫を飼うの?当直とかあるよね」

「…えーと、保母さんがくることになってる」

「シンさん、あの子、部屋に入れたの?」

「…成り行きだよ。特に…どうという訳じゃない」

「へえ。俺の知っている限りじゃ、ひとりだけしか入ってなかったと思ったけど…」


僕は自分のテリトリーが荒らされるのが嫌で、
遊びのオンナノコは部屋に入れない。と決めていたから、結婚したいと思っていたヒトしか部屋に入れていないと友人達は知っているのだ。

今回は仕方のない特例だ。


「…別にいいだろ」

と僕が機嫌の悪い顔を見せると、
はいはい。と笑って僕を追い出す。

「面白い事になっていそうだな。
猫の事でわからない事があったら、聞いてください」

と藤原は僕に楽しそうな顔を僕に向け、鍵をカチャンとかけた。


全く、あのイブキってヤツは困ったヤツだ。

友人にまで、ニヤニヤされているじゃないか…

僕は心の中で悪態をつきながら、後部座席にキャリーケースを置いて、
少し乱暴にエンジンをふかしてから、車を発進させた。
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