シンさんは愛妻家
大きな荷物を抱えて部屋に戻ると彼女が部屋から待っていたようにパタパタと出てきて、

「おかえりなさい」と僕の顔を見上げて嬉しそうに微笑んだ。

熱、下がってきたか?

僕は思わず荷物を置いて、彼女の額や首筋に手を当て、熱が下がっている事を確認する。


彼女は恥ずかしいのか、うつむいていたけど、

「タビィ!!」

としゃがみこんで僕が持っていたキャリーケースを覗いて声を上げる。

タビィは運ばれている時は震えていたくせに突然ニャァニャァと賑やかに鳴いている。

彼女が嬉しそうにキャリーケースを受け取り、顔を寄せて微笑んでいる。

「君、…熱、下がって来たね。
色々用意が終わってから、タビィを出すからちょっだけ待ってよ。」と僕が言うと、

「はい。ありがとうございます。
先生、イブキって呼んでください。
手伝わせてください。熱も下がってきてます。
…ご飯もたくさんたべました。」

と昨日は熱が高かったから、何もするなと言っておいたからか、僕の後を付いて歩いて元気になったアピールを一生懸命にしている様子だ。

僕の寝室にまで付いて来ようとするので、

「着替えるから…」と言うと、

「ごっ、ごめんなさい!」
と驚いた顔を赤くし、ぐるんと後ろを向いて部屋をピュッと飛び出していく。

…猫みたいなヤツだな…
と少し微笑む。







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