シンさんは愛妻家
「あのさあ、バイトのままだと思いがけない支出があると生活にすぐ困るよね。
君は事務は嫌?
医療事務の資格を取ったら、どこかで正社員で働けるんじゃないかな…
今の病院は派遣の子も多そうだけど、
クリニックなら正社員を雇うところもあると思うよ。」

「…資格なんて…お金もかかりそうだし…
私…あまり頭も良くないし…
取れる気がしません」

「…タビィと暮らしたいんでしょう?」

「それはそうなんですけど…」

「医療事務で正社員なら猫が飼えるところに住めるかもしれない…
調べてみたんだけど…
学校って週に2日通えばいいみたいだよ。
ちゃんと勉強しないとダメだと思うけど…
3ヶ月で終わって、試験を受けられるみたいだから
あのアパートは出て、ここにいてお金を貯めて、部屋を探そう。
部屋を借りるときに保証人になってあげるよ。
それで資格を取って仕事を探す。
僕も手伝うから…
僕に頼るぐらいだから恋人もいないんでしょう?
だったら、3ヶ月くらいここにいてもいいんじゃないかな…」

「どうして…そんなに親切なんですか?」

「乗りかかった船だって言っただろ」

「…私の…身体が目的でもないのに…?」

「…ねえ、君はカラダは女でも、心は男…なんじゃないの?」

「え?」

「何度も『僕』って言ってただろ」


彼女は驚いた顔で僕を見ている。





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