シンさんは愛妻家
「僕と離婚した後、彼女は親に勘当されて…
その人と結婚したんだ。
でも、生活は苦しかった。
僕は彼女にも子どもにも忘れられたくなくて…
子どもの養育費を送り続けたんだ。
きっと使って生活せざるを得ないって知っていたから…
彼女に…僕の事を忘れさせないために…
僕の子どもだって偽って結婚して、
それでもその男と会っていた事を…忘れさせないために…
そんな事が出来る僕は…優しくないよ。
でね、去年、彼女の父親が亡くなって相続があってさ、彼女は全額返して来た。
…いらないって言ったのに…
だからね、そのお金は使っていいんだ。
僕の…醜い思いのお金だから。」

僕はやっと『ごめんなさい』と言った元の妻を見て
やっと少しホッとした。

もしかしたら、僕を愛していたのかも…なんて
少し思ったりしていたから…

僕のことは好きだったけど、愛してはいなかったと…
子どものために僕を選んだって…
彼女はやっと言ったんだ。

…だからお金を受けとった。

これで、唯一大切だと思った子どもも
僕と縁が切れてしまった。


「…いいえ。
先生は優しいです。
…絶対…
だって、そのお金で、お子さんは大きくなったんでしょう?
それに、お金は大切です。
無駄に使っちゃダメです」

とイブキは僕の顔を真っ直ぐに見ながら、顔を真っ赤にして
ポロポロ涙を流す。

「…イブキは泣かないでいいよ。
僕がどんな身勝手な男か知って欲しかっただけ。
お金が無駄にあることもね。」


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