シンさんは愛妻家
「じゃ、行くわよ。
私も店を開けなきゃならないし…
開店したばかりで大忙しなのよ。
まったくもう!!」

ペットボトルのお茶を飲み干し、僕の手をガシッと掴む。

「…え?いま?」

「当たり前よ!
私がこの忙しいのにワザワザ来たんだから…」

「ま、待って!会議が…」

と言うと、ジロリと睨まれる。


「わかった。
電話かけさせて。
着替えもしないと…
車で行くから、救急の裏の職員の駐車場で待ってて」

と僕もいいながら、ピッチで榊に電話する。

「もしもーし。榊です。
常盤先生、無事ですか?
あの美人に食われてるんじゃないかって話してたんですけど…」

と笑った声がする。

「いや、猫が見つかりそうなんだ…
悪いけど、早退する。
会議と、後の仕事頼む。」

と僕の慌てた声が、伝わったんだろう。

「いいですよ。
こんど、その美人の店に連れていってくださいね。約束しましたよ。」

と楽しそうに笑う。

いや、
店に連れて行くのは
構わないけど…

…きっとゲイバーって感じだよな

と僕が躊躇して返事をしないでいると、

「先生、約束してください」

と念を押してくるので、

「わかった。…でも、文句言うなよ」

と僕が渋々言うと、

了解ですと電話が切れた。


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