シンさんは愛妻家
僕が以前勤めていた

東野記念病院の救急外来の前に車を止め、電話をしてから10分ほど待つと、

ガタイの良い野生的なイケメンの友人がゆっくり歩いて来た。

僕はイブキと車を降りて迎える。


「シンさん、元気だった?
急に結婚するだなんて驚くよ」

と口の端をあげて面白そうに僕の顔を見る。


「忙しいところを悪いね。
でも…リュウには会って貰っておこうって思ってさ…イブキって言うんだ。こっちはタビィ。」

とタビィを抱いて、顔を真っ赤にして頭を下げるイブキに


「うん。可愛らしい子だね。
…あいかわらず手が早い男だな。」

とイブキに笑いかけてタビィの頭を撫でてから僕の顔を見る。


「なんか…放っておけなかったんだよ。不器用で真っ直ぐでさ…」

「で、どうにも好きでたまらないって?」

「…うーん。まあ、そんなところ。」

「子どもがいる?」

「どうかな?彼女はそう思ってるけど…
僕はただ彼女を妻にしたい。」

「まあ、どっちにしてもおめでとう。
ナナコの飯を食っていく?」

ナナコは彼の自慢の奥さんで料理上手だ。
たまにはナナコちゃんの美味しいご飯もいいけど、僕はイブキの素朴な料理が好きだ。

「今日は猫がいるからまた今度。
今度、ゆっくり飲もう。
行きつけの店が増えたから、今度案内する」

「ああ。じゃ、サインさせて。
俺も、仕事に行かねーと。」

とリュウは笑って婚姻届の保証人の欄にサインをしてくれた。

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