シンさんは愛妻家
一度家に戻って連れ回していたタビィを部屋に出すと、

嬉しそうに部屋の中を走り回り、トイレを済ませ、水を飲んで、

お気に入りのクッションの上で眠ってしまった。


僕達はタビィが落ち着くのを待ちながら

ソファーに座ってイブキを膝の上に乗せ、

「もう、どこにも行かないと誓って」

と耳元で囁きながら何度も唇をつけるだけのキスをする。

イブキは何度も頷きながらまた、涙を落とした。


今日のイブキは泣き虫だ。

僕は泣かせたいわけじゃないのに…


さて、

近所の産婦人科に行く。

ここは分娩の設備が整っていて、小規模ながらも人気のクリニックだ。

50代のご夫婦で産婦人科を経営しているところだ。

もちろん、奥さんに診察してもらう事にする。

尿検査に血液検査。エコーももちろん。

診察室に呼ばれて2人で椅子に座る。

「結果から言います。今回は妊娠していません。
生理が止まったのは原因ははっきりわかりません。
子宮や卵巣にも異常はないようですね。
ストレスでも、生理は止まりますし…
とりあえず、一度生理をおこして、様子をみましょう。」

とイブキの顔を見て少し、笑顔を見せた。


イブキはすっかり妊娠していたと思っていたからか驚いた後に、肩を落とした。

僕はイブキの頭を撫でて、ゆっくり休めばまたチャンスがくるよ。

と宥めながら病室を出た。







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