愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
扉を閉めると、カチャンと後ろで鍵が閉まる音が。
鍵?なんで?
シーンと静まり返った会議室。
彼は眉を下げ、申し訳なさそうに言った。
「ごめんね、見られてたかな?」
「いえ、すみませんでした。私も、聞くつもりは無かったんですが……」
私が曖昧に答えると、一ノ瀬さんは笑顔を崩さないままこっちを見つめる。
「いやいや、全然気にしてないよ」
そして口角を少しだけ上げて、じりじり私に歩み寄る。
「あ、の一ノ瀬さん」
「ん?」
惚けた顔の笑顔はいつも見る表情とは変わらないはずなのに、何かがおかしい。
「なんか、その」
一ノ瀬さんは一歩、また一歩と私との距離を縮めることをやめない。
「ち、近くないですか?」
何かがおかしい。そう思った瞬間、私は気がついた。
よく見ると目が笑っていない。
それ気づいた瞬間、一ノ瀬さんが目を細めた。
ゾクっと背筋に寒気が走る。
「朝比奈さんさ、どこから見てたの?」
「え?」
一度はいつもの一ノ瀬さんの声で、もう一度言ったその言葉は聞いたことのないくらい低い声で落とされた。