愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
私を呼んだのは営業部に所属している麻美だった。私と同期入社ということもあり、よく飲みに行く間柄だ。
書類を持って廊下に出る。
ダークブラウンの髪をひとつにまとめ、背筋をピンっと伸ばして歩く彼女はハッキリと物事を言う性格だ。
しかし、自分の主張に芯があるため話していてもそれが嫌にならないところが私は気に入っている。
「どうかした?」
私が尋ねると、廊下の角まで来たところで麻美は言った。
「実はさ、今度営業部だけで懇親会をすることになったんだけど、幹事任されちゃってさ〜いつも行ってるところにしようと思ってたんだけど、よりによって満席で……。夏帆どこかいいところ知らない?」
「あーそれならひとつ候補があるかも」
「本当?」
「うん、前に一ノ瀬さんがみんなを連れて行ってくれた店なんだけど」
一ノ瀬さんが連れていってくれたその店は店内が広く、お酒も料理も美味しかった。
私はその場所をスマホで検索してウェブページを麻美に送る。
「ありがとう、助かる。にしても一ノ瀬さん太っ腹ね、モテるのも分かるわ」
一ノ瀬さんというワードでぴんと思い出す。
そうだ、社内の誰かに言っても信じてもらえないかもしれないけど、麻美なら分かってくれるかもしれない。