愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
私は一ノ瀬さんの手を振り払うと、今度は自分の力でしっかりと立ち上がった。
「へぇ」
すると、一ノ瀬さんは目を細める。
「そういうこと言うんだ?」
妙に色気の含んだ声が耳にまとわりついて離れない。
「な、何か悪いですか!」
「いくらなんでも対価を求めといてそれはねぇんじゃねーの?」
「対価って……」
「お前は昨日、俺とキスをして契約を結んだだろう?口止め料が足りねぇつーならいつでも相手してやる、だからその口はちゃんと塞いどけよ」
一ノ瀬さんの骨張った手がすっ、と伸びてきて私の唇を摘む。
「ん、む」
その手を軽く遊ばせて、バカにしたように笑った。
もう限界だ。
一ノ瀬さんはハッキリ言わないと分からない。
「あのですね、勘違いしてるみたいですけど、一ノ瀬さんのこと、女性がみんな好きだと思ったら大間違いですから!」
私は彼の手を振り払うと、強い口調で言い放った。
「私は正直一ノ瀬さんみたいなタイプが一番嫌いです!だからキスされても身体の関係持ってもちっとも嬉しくないです!っていうか、イヤ!」
「嫌?」
勢いに任せて言ってしまったけど、後悔はしていない。
やっと、言ってやった。
その自慢の長〜い鼻をポッキリ折ってやった。
ぎゅっと唇を噤んで一ノ瀬さんを見上げる。まっすぐ私を捉える瞳に思わず1歩体を引いてしまったけれど、目は逸らさなかった。
「言ってくれんじゃん?」