愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
怖くなんてないし、絶対に負けない。
挑むように彼を見続けていると、彼はふっと笑った。
「なにがおかしいんですか!」
「やっぱり朝比奈、お前はバカだな」
「な……っ」
私の言葉を遮るように一ノ瀬さんはもう1歩私に近づく。超至近距離で上から見下ろされ、私はびくりと身をすくめた。
「いいか、男つーのはな。
好きだって言われるよりも嫌いだって言われる方が燃えるんだよ」
ドキン、と胸が音を立てる。
認めたくないのに、意地悪に笑う一ノ瀬さんにたった一瞬でも惚れそうになったのが、悔しくて仕方ない。
私はうるさく鳴る心臓の鼓動を必死に隠しながら、平然を装って言った。
「何が言いたいのか分かりません」
「分からないなら教えてやる」
一ノ瀬さんは1歩私に近づくと、耳元で甘く囁いた。
「お前をオトしてみたくなった。
俺が好きでどうしようもないって言わせてやるよ」
「っ、」
その言葉を理解出来ないまま、呆然と立ち尽くす。瞬きさえ忘れた私を見て、彼は楽しそうな顔をして言った。
「楽しみにしとけよ」
心地いい声が心臓に直に響いて嫌になる。
ああ、もうだから嫌いだ。
この声もこの自信満々の表情も全部、大嫌いだ。