愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
それから。
彼は「今度俺のこと言おうとしたらどうなるか分かってるよな?」という脅し文句を残して部屋から出て言ってしまった。
この部屋にひとり残された私は緊張から解き放たれて、へなへなとその場に座りこんだ。
何だったの……。
もう本当に意味の分からないことになってしまった。何がどうなったら私をオトすに変わるの?
鼻を折ってやったなんて喜んでいたら、それはただ一ノ瀬さんに火を付けてしまっただけだった。
「はあ、」
あの時、あれを見てしまわなければ。
私は一ノ瀬さんを今でも王子様のような人だと思っていられたのに。
部屋から出ると、私は自分のデスクに戻った。
一足先に戻った一ノ瀬さんはパソコンの前で平然と仕事をしている。
あんなことした癖に!という気持ちを心に押し込んで私は午前中やっていた仕事のデータを立ち上げた。
すると、メールボックスに一ノ瀬さんからのメールが届いていた。
中身を見るため、クリックしようとした時に私はトンッと肩を叩かれた。
「朝比奈さん、ちょっといいかな?」
振り返ると何事も無かったような顔をする一ノ瀬さんが立っていた。思わず身をすくめる。
「この前出してくれた企画書のことだけど」