愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~





「一ノ瀬さん、ここの訂正なんですけど」

「ああ、これはこうして長くなる文をこっちに移動させるとスマートになるんじゃないかな」

「本当だ、ありがとうございます!」

「頑張って」


彼がふわりと柔らかな笑みを浮かべると、目の前の女性はぽっ、と顔を赤らめる。

それを周りで見ていた女性社員もみんな巻き添えで、彼を見てはあっと甘いため息を落とした。


「一ノ瀬くん、ちょっといいかな」

「はい」

話が終わると今度は上司からの問いかけに、キリっとした表情を作って対応する。

「この仕事を頼みたくてな」

「分かりました、任せて下さい」

「一ノ瀬くんは本当に頼もしいな」

「とんでもないです」

その場その場に相応しい表情を使い分けては信頼を得て、時に女性たちの視線を奪っていく。

もちろん表面上だけでなく、しっかり成果もあげているから、彼は多くの人に好かれている。

仕事も出来て、信頼も厚く、ルックスもいいなんて、まるでお手本のような人だと思った。


そんな彼の名は一ノ瀬廉(いちのせれん)大手広告代理店、企画開発部に所属する30歳で、部内リーダーを務めている。私の直属の上司にあたる人だ。

仕事では常に冷静に物事を判断し無駄のない働き方をする人で、まさにできる男の典型と言ったところ。


< 3 / 98 >

この作品をシェア

pagetop