愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
「お飲み物をお持ちしました」
一ノ瀬さんと共にやって来たのは、会社から五分くらい歩いたところにある、少し小洒落た居酒屋だった。温かみのある照明が店内を照らし、あまり煩さを感じない落ち着いた店だ。
。
その店のテーブル席に一ノ瀬さんと向かい合って座り、たった今来たばかりのグラスの縁をお疲れ様です、と小さくつける。
冷えたビールが喉に広がり、疲れまで吹っ飛ばしてくれるようだった。
「あ〜美味い」
変な感じだ。
一ノ瀬さんとふたりきりで呑んでいるなんて。
お通しに手をつけて顔を綻ばせる一ノ瀬さん。
「やっぱりこの味だな」
コクコクと頷きながらそんな言葉を漏らす。
「この店にはよく来られるんですか?」
「最近忙しくて全然来られなかったから久しぶりだな」
「そうなんですね」
一ノ瀬さんと案外普通に話せることが不思議だった。
きっと、彼の口調が外向きの口調でないこともあるだろう。
出てくる料理はどれも家庭的な味付けでなんだかほっとする。
次々と運ばれてくる料理に手を伸ばしながらたわいない話をしていると、横から声をかけられた。
「一ノ瀬さん?」