愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
声のする方に視線を移すと、すらりとした女性が立っていた。 女性は一ノ瀬さんを見ると目をぱっと輝かせて言う。
「やっぱりそうだ〜。まさかこんなところでお会い出来るなんて驚きましたよ〜」
肩まである髪を緩く巻いている彼女はRIS(リッズ)デザイナーの三島さん。うちで良く依頼をしている人だ。
一ノ瀬さんは、にこっと作った笑顔を浮かべると挨拶をして頭を下げた。私も一ノ瀬さんに合わせて頭を下げる。
「三島さん、先日はお世話になりました」
「いえいえ、こちらこそ。貴重なお話も聞けて本当に楽しかったです。また誘ってくださいねぇ?」
「はい、ぜひまた」
私に一切向けられない視線にあからさまに媚びた声。なんというか……分かりやすいけれど、ここまでだと逆にすごいなと思う。
一ノ瀬さんは丁寧に対応して頭を下げた。
「今後ともよろしくお願いします」
「もう、そんな堅くなくていいですよ〜」
よろしくお願いしますね、とひらひらと手を振って奥の部屋に入っていく三島さんを確認すると、一ノ瀬さんは吐き出すように言った。
「あー、めんどくせ」
「うわ……」
彼の心の底から漏れた本音は何度聞いてもエゲツないなと思う。