愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
その笑顔にドキッと心臓が強く胸を打つ。
あんな顔、初めて見た。
「お前のそういうところ、割と気に入ってる」
作っていない彼の笑顔に不覚にもときめいてしまった。
うるさく鳴る心臓の鼓動が知られてしまわないよう、お酒を煽るとアルコールが喉に広がる。グラスを空にすれば、お酒が体を巡っていくのが分かった。
なんだろう、いつものドキドキと違う。心の奥がもどかしい感じ。
「そ、そんなこと言われても何も出ませんからね!」
「別に何も期待してねぇよ」
慣れない。
「まあ、だからお前といる時は特に楽だな」
小さくつぶやく言葉が耳に届く。
ドキンドキンと早まる鼓動をアルコールのせいにしたくて、店員が持って来たグラスをすぐ手にとって口にした。
「じゃあ私に本性がバレて良かったってことだ」
「お前がずっと黙ってればの話したがな。まぁ言わせねぇけど」
なんか、やっぱり。
この人はズルいなあと思う。
裏があると分かっていながらもこの、一ノ瀬さんという人はどこか魅力がある。
だからこそ苦手だ。
全てを兼ね備えたこの人が。