愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
店を出ると、すっかり冷たくなった夜風にあたった。アルコールで火照った体が冷まされてとても気持ちが良い。
「一ノ瀬さん、ご馳走様でした」
「ん。つか、お前けっこう呑めるのな?」
一ノ瀬さんの問いかけに私はぼーっと考えみる。
私?けっこう呑めたっけ?
というか、どれぐらい呑んだんだろう。誤魔化すために飲んだ2杯目くらいしか記憶にない。
ふわふわした思考で考えて見ても、答えにたどり着かない。もしかしたら思いのほか酔っているのかもしれない。
「お前、様子が変だぞ?」
すっと伸ばされた手が私の頬を撫でる。一ノ瀬さんの手は程良く冷たくて無意識に目をつぶってしまった。
「熱っ、酔ってんのか?」
「ん……?」
ぼう、っと一ノ瀬さんの顔を見つめる。睫毛が長く鼻も高い。おまけにくっきり二重って、天は二物を与えずとは良く言ったものだ。
「一ノ瀬さんって、キレイな顔してますよね……」
思ったことをそのまま口にすると、目の前の彼は眉をひそめる。
あはは、へんなかお。
そう声に出したかは分からない。
「チッ、顔に出ないタイプかよ」
ただ、覚えているのは一ノ瀬さんが面倒くさそうにそう言う姿だけだったーー。