愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
「い、一ノ瀬さん……!?」
ドアを開けたのが知らない男じゃなくて良かったと思う反面、その状況に安心してはいられない。
一ノ瀬さんの部屋に下着姿の私。
もしかして一ノ瀬さんと……。
息を詰める。
終わった、私の平穏な日々が。
「昨日のこと覚えてる?」
柔らかな笑みを浮かべる一ノ瀬さんに、わずかな期待を持って聞き返す。
「わ、私は……何を!?」
どうか何もしてませんように。
そう心の中で願っていると一ノ瀬さんははあ、とあからさまにため息をついた。
「やっぱり覚えてないのか」
彼はこっちに向かって歩き出すと、ゆっくり私との距離を縮めて来た。
「な、なんですか……っ」
ベッドに乗り上げ覆いかぶさってくる。ギシっとベッドが軋む音が響き、思わず肩をすくめた。
すると、彼は私の耳もとに顔を近づけてささやいた。
「お前ってけっこう大胆なんだな」
甘い声を注がれて、かあっと顔が熱くなる。
「あ、あの、」
声が上擦って上手く話せない。
私、何したの?
パニックになっていると、静かに息を吐く唇はさらに私にさらなる情報を伝えて来た。
「昨日の夜は楽しませてもらったよ」
唇の端を持ち上げて笑う彼に私はひくり、と顔を引きつらせる。
……やってしまった。