愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
記憶がないままに、一ノ瀬さんと関係を持ってしまった。もうこれからどんな顔して会社に行けばいいのだろう。
頭を抱えていると、一ノ瀬さんは細い指先で私の首すじをすぅっとなぞった。
「ひゃっ」
思わず出てしまった声にとっさに口元を覆う。それを見た一ノ瀬さんはぐっ、と目を細めて笑うと、意地悪な口調で言った。
「昨日はあんなに鳴いてたのにな?」
「な、な……っ」
固まった身体は動かない。
もう頭は真っ白だった。
とにかく冷静になりたいと、ドンっと彼の胸板を押して、距離を取る。
「お、覚えてません……すみません、帰ります!」
慌てて布団から出ようとした時、改めて自分の状態に気がついた。
「……っ」
冷静な一ノ瀬さんの声が降ってくる。
「その格好で帰るのか?捕まるぞ」
「ふ、服を返して下さい!」
「……返すってお前なぁ」
一瞬の沈黙を置き、彼は呆れ顔を見せるとはあ、と深く息を吐いてベッドから降りた。そして小さくつぶやく。
「本当に何も覚えてねぇんだな、あんなに迷惑を掛けておきながら」
「え?」
嫌味をたっぷり含んで私を見る一ノ瀬さんは昨日の私の行動を事細かに話し始めた。