愛縛占欲～冷徹エリートは溺愛を手加減しない～

眼の保養って。そんなこと望めばしてくれる女子はわんさかいるクセに。


ギッと彼を睨みつけても「悪いのは誰だ？」と聞かれてしまったら当然悪いのは自分なので、反論の言葉を飲み込むしか無かった。

私ははぁと小さく息を吐くと、諦めて冷蔵庫を開ける。


……すっからかんだ。


これでよく朝食でも作れと言えたものだ。これじゃあ陳腐な朝食だと文句を言われても仕方ないものしか出来ない。


「もう」


わずかに残っている卵をスクランブルエッグにして、付け合わせにはカリカリに焼いたベーコンを。野菜室にポツリと置かれたレタスをサラダにすれば、まあそれなりの朝ご飯になった。

味噌汁は具が無いから即席味噌汁で我慢してもらおう。炊きたてのご飯を盛り付けてテーブルに並べると私は言った。


「材料が無かったんです、貧相だとか言わないで下さいよ」


絶対に何か文句でも言ってくるだろうと思ってクギを刺しておいたのに料理を見た一ノ瀬さんは上機嫌で呟いた。


「いや、美味そうだ」

「えっ」

そんなこと、言ってくれるとは思わなかった。


一ノ瀬さんは、時折こっちの想像とは違うこと言ったりもする。掴めない人だ。


「お腹空きましたし、食べましょう」

「ああ」


イスに座り「いただきます」と手を合わせると、一ノ瀬さんは最初にスクランブルエッグに手をつけた。