愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
「バレたら泣く女子いると思いますよ」
「まっ、お前がそういう女じゃなくて良かったよ」
そういう女って……。
「じゃあ本命はいるんですか?」
私の言葉に彼はゆっくり笑みを作ると意地悪く言った。
「気になるか?」
「き、気になるっていうか部屋に入ってしまったので、もしいたら申し訳ないというか」
「今更遅せぇだろ。ひと晩一緒だぞ?もしいたら、お前確実に刺されてんな」
「ひ……っ」
この人に限っては否定出来ない。粘着質な女の人が多そうだし……もしいたら、というのを想像して背筋がゾッとした。
「今はあいにく本命は作ってない。色々と面倒なこともあったしなー」
面倒なことってなんだろう。一ノ瀬さんの本性がうっかりバレてしまったとか?そんな疑問を聞けぬまま、一ノ瀬さんは、残りの朝食をすべて平らげると「ごちそうさま」と丁寧に手を合わせて、お皿をシンクへ運んだ。
でも本命がいないってだけで、遊んでる女はいるとか?そういうこと?
読めない。
っていうか私、なんでこんなこと考えてるんだろう。
別に一ノ瀬さんに相手がいようが、いまいがどっちでもいいはずなのに。
私も後に次いで食器を片付けると、スポンジに泡をつけて洗い物を始める。
考えたって仕方ない。
「そこまでしなくてもいいぞ」
すると一ノ瀬さんが言った。
「いえ、罪悪感があるのでやります」
「そ」
その隣で一ノ瀬さんは鼻歌を歌いながらコーヒーを入れてくれた。
「カフェオレでいいか?」
「あ、はい……いいんですか?申し訳ないですし、すぐ帰りますよ?」