愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
「ねぇ、朝比奈さんもそう思いません!?」
真っ直ぐな瞳に見つめられ、同意を求められる。そりゃ、前の私だったら迷わず首を縦に振っていただろう。だけど、今は違う。
「ど、どうかな?」
悪魔に騙される人を増やしてはいけない。
「ほら、人間みんな二面性があるっていうし……一ノ瀬さんだってもしかしたら」
「俺がもしかしたら?」
「ヒィッ」
気づけばひょこと私たちの間に顔を出していた一ノ瀬さん。笑顔はお手本のように口角が上がり、私に微笑みかける。
こ、怖すぎる。
相変わらず、笑顔を浮かべているけれど、目が全く笑っていない。
っていうか、どうして毎回こんなにタイミングよくやってくるんだ。オフィスから出て行ったはずじゃなかったの?
そんな疑問はすぐに一ノ瀬さんが解決してくれた。
「書類を取りに戻ったらなんだか面白そうな話をしてるからさ、つい。立ち聞きしてごめんね」
「あ、はは……」
ごめんね、という言葉がもはや『お前覚えてろよ』と言ってるようにしか聞こえない。冷や汗が止まらない私。そこに進藤さんが追い打ちをかけるように言った。
「朝比奈さん、一ノ瀬さんにも二面性があるかも、なんて言うんですよ〜」
「ははは、それは面白いねーー」
妙に間延びした語尾が私に脅迫をする。