愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
普段より低い声で名前を呼んでから私の元へとやってくる。そしてがらり。
「いい度胸だな、お前」
悪魔は姿を現した。
「い、言ってはないですよ!もしかしたら裏があるのかもっていう話をしただけで……」
「もしも、な?」
そうやって呟くと考え込むように顎に手をやり私をまじまじと見つめた。
「何ですか?」
「もしかして、俺に手出されたくてワザとやってるのかと思ってな」
「はぁ!?何言ってるんですか!」
ひときわ大きい声を出した私にふんっと鼻を鳴らす一ノ瀬さん。
「違うのか?」
「違うに決まってるじゃないですか!」
「ふーん」
ゆっくりと含みを持たせて距離を縮めてくる一ノ瀬さんに、もう前みたいにはならないぞと胸を張る。
じりじりと追い詰められて逃げ場がないなんてごめんだ。
負けない。
至近距離で一ノ瀬さんからの視線を浴びても、私は一歩も引かなかった。
「本当に?思い出して見ろよ。俺としたキス、気持ちよかったんじゃねぇの?」
目が細められた瞬間、不覚にも一ノ瀬さんとしたキスを思い出してしまいかあっと顔に熱が集まった。
「よくなんて……っ」
「腰抜かしてたくせに?」