愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
うそ、もしかして……。
名刺を差し出された時、それが確信に変わる。
【吉井渉】
知り合いだった。
それもあまり薄い人間関係ではない人。
彼も私の反応を見て気づいたようで、はっと顔を上げた。
「もしかして朝比奈?」
「あ、はい。お久しぶりです」
何事も無かったかのように軽く頭を下げてそう言ったけれど、正直、心臓はバクバクだった。
覚えてたんだ。私のこと。
知り合い?と尋ねて来た一ノ瀬さんに大学が同じで、とだけ答える。正式には大学時代、同じサークルで知り合いお付き合いをしていた人だ。そして、私がなんとなく忘れられなかった人。
まさかこんなところで会うとは思いもしなかった。
「ではさっそく前回の見直しさせて頂きまして、少し変更点を……」
彼がプレゼンの資料を私たちに差し出すと、説明を始めた。大学を卒業してからずっと会っていなかったけれど、説得力のある話し方をするところは昔と変わっていなかった。
懐かしいな。昔から何でも器用にこなすから、多くの人が彼の元に集まっていた。
きっと今もそうなんだろう。そんなことを考えていると、一ノ瀬さんが私に話を振った。
「朝比奈さんはどう思う?」
「あ、はい……」
こんなこと考えていてはダメだ、集中しなくちゃ。
ーーー。