愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
【今度食事でも行かない?】
朝。
私はスマホのディスプレイを見て、打つ文字を考えていた。
昨日の夜、言われていた通り、吉井さんからメッセージが届いた。数回のやりとりを終え寝ようと思っていた矢先、それが送られて来たのだった。
私はそれを見なかったフリして返事を朝まで引き伸ばしたのだけど……どうしよう。結局返事は決まらなかった。
別に食事だけならこんなに悩むことないと思うんだけど、少し怖かったりもする。私にとって、吉井さんに別れ際に言われた言葉はトラウマだった。
『正直さ、お前のそれ全然分かんねぇわ。なんで付き合ってんのにコソコソデートしなきゃいけねぇの?なんかもう無理だわ、別れよ』
自分が悪かったことは分かっている。だけど、自信がなかった。今でもそれが変われたんだって胸張って言えない限り会って2人で話すのは戸惑ってしまう。
こんな昔のこと、気にしてるのなんて私くらいだよね。吉井さんはきっと覚えていないようなことかもしれない。
「へぇ、やっぱり誘いが来たのか」
「きゃっ!い、一ノ瀬さん!?」
会社の休憩スペースでメールを打っていた私。気づけば背後には一ノ瀬さんが立っていた。
「いつの間に……というか覗かないで下さい!」
「見せてんのかと?」
「そんなことしないです」