愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
「はーあ、最近の私なんか変」
ドキドキしたり、一ノ瀬さんを意識したり、向こうは面白がってからかっているだけなのに。
深くため息をついた後、私はスマホを取り出し打ちかけていた画面に続きを入力した。
【仕事終わりとかどうですか?】
吉井くんに打ったメール。
食事くらいで悩んでる方がバカバカしいよね。
そして3日後。
吉井くんと約束した日がやってきた。
時刻は18時。
キリの良いところで、データーを保存すると、私はパソコンの電源を落とした。スマホを一度確認する。待ち合わせ場所は私と吉井さんの会社の中間地点の駅だ。
バッグを持ってオフィスを後にしようとした時。
「朝比奈さん、今平気?」
突然、書類を持った一ノ瀬さんに呼び出された。まだ人がいることもあってか外向けの言葉であった。
「あ、はい……」
なんだろう。不思議に思いながらも、人のいない会議室に移動すると中に入ってすぐ彼は尋ねた。
「今日さ、この後予定あるか?」
「え、えっと……今日はちょっと友達と飲みに」
あえて、友達という言葉を使う。いや、だって一ノ瀬さんに言う必要なんてないし……もちろん隠す必要もないのだけど。
「そう、か」
すると、一ノ瀬さんはそっと息を吐く。なんか、落ち込んでる?いや、気のせいかな。
「あの、何かありました?」
「いや、今日はいい……」