愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~



「はーあ、最近の私なんか変」


ドキドキしたり、一ノ瀬さんを意識したり、向こうは面白がってからかっているだけなのに。

深くため息をついた後、私はスマホを取り出し打ちかけていた画面に続きを入力した。

【仕事終わりとかどうですか?】


吉井くんに打ったメール。
食事くらいで悩んでる方がバカバカしいよね。



そして3日後。
吉井くんと約束した日がやってきた。


時刻は18時。

キリの良いところで、データーを保存すると、私はパソコンの電源を落とした。スマホを一度確認する。待ち合わせ場所は私と吉井さんの会社の中間地点の駅だ。

バッグを持ってオフィスを後にしようとした時。


「朝比奈さん、今平気?」


突然、書類を持った一ノ瀬さんに呼び出された。まだ人がいることもあってか外向けの言葉であった。


「あ、はい……」


なんだろう。不思議に思いながらも、人のいない会議室に移動すると中に入ってすぐ彼は尋ねた。


「今日さ、この後予定あるか?」

「え、えっと……今日はちょっと友達と飲みに」


あえて、友達という言葉を使う。いや、だって一ノ瀬さんに言う必要なんてないし……もちろん隠す必要もないのだけど。



「そう、か」


すると、一ノ瀬さんはそっと息を吐く。なんか、落ち込んでる?いや、気のせいかな。


「あの、何かありました?」

「いや、今日はいい……」




< 61 / 98 >

この作品をシェア

pagetop